こんにちわコノハです。

そうだ!京都へ行こうのキャッチコピーが
ピッタリな季節、お寺めぐりや御茶屋で一服など
秋の京都が目にも楽しい季節です。

京都

京都市北区上賀茂本山に位置し
多くの観光客で賑わう賀茂別雷神社
(上賀茂神社)で、先ごろ40年に一度の
屋根の吹き替えが行なわれたそうです。

 

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はじめに

678年、天武天皇により造営された
上賀茂神社は多くの国宝や重要文化財としての
多数の社殿を要する上賀茂神社。

年間70数回にも及ぶ神事が先人達よりの
弛みない努力の結晶としてユネスコに認められ、
境内全域二十三万坪が世界文化遺産に登録されました。

社殿や仏閣の宮造りに欠かせないのが「宮大工」ですが
パーツ毎に仕事が分業化されていて、それぞれ専門の
大工さんが存在します。

上賀茂神社も例外ではなく
特に屋根を葺く職人さんは屋根葺師に
檜皮葺師(ひわだぶきし)という檜を使用した
屋根葺き職人がいます。

彼らの仕事が凄い早業なのです!

 

屋根葺き職人達

素材加工の原皮師(もとかわし)

屋根に葺く檜(ひのき)を伐採せず表皮だけを使います。
この檜の表皮を採取し、屋根葺き用に加工する職人のことを
原皮師(もとかわし)といい、檜皮葺に欠かせない職人です。

原皮師は高い木に登って、一般に長さ75センチ程度に
加工したものを30kg毎に束ねて檜皮葺師に納めるのが
その仕事です。

危険を伴い難儀で過酷なためか、
残念ながらその担い手は減っているそうです。

逆に屋根葺師(ふきし)は若い世代が
増えてきているそうで、今後の育成を期待したいです。

 

屋根葺き職人の檜皮葺師(ひわだぶきし)

檜皮葺(ひわだぶき)とは、檜の樹皮で建物の屋根を
葺ふくことで、それを専門に生業とする職人さんです。
檜皮葺は最も格式高い技法の1つで、当時の貴族や
神仏を祀る社殿や仏堂の工法とされてきました。

檜皮葺は植物性屋根葺工法のひとつで
他に「こけら葺(厚さ3mm程のスギやサワラの
板を重ねて葺く工法)」や「茅葺かやぶき
(ススキやアシなどで葺く工法)」があります。

いくつかの規格に加工された樹皮を一般には長さ75cm
先端の幅15cm、後ろ側の幅10.5cm、厚さ1.5~1.8mm
程度に形を整え、屋根の下側から上に向かって1.2cmずつ
ズラシながら葺いていくのです。

その際に使われるのが「竹釘」です。

 

出典:youtube 「竹釘打ち。 圓教寺新緑まつり」より

 

上の動画は檜皮葺職人が「竹釘」を
早業で打ち込み、屋根を葺いていく様子です。
この作業を延々と続けていく根気の要る仕事です。

檜皮葺職人が「竹釘」で屋根葺きしている動画

 

しかし…京都の檜皮葺職人
犬飼傳吉さんによれば

「目に見える屋根葺は最後の3割程度で、7割方は地道な
皮ごしらえです。屋根に合わせて檜皮をむいて厚さをそろえ、
檜皮包丁で一枚一枚必要な形に裁ちそろえる。
それを何十万枚と用意するのです」

出典:京都府民だより

と驚愕の職業エピソードを披露します。

 

屋根葺きの様子
↑屋根材を下ごしらえする様子と実際の作業

仕事のすべては準備で終えている。
現代の私達にも通じるところがありますね。
それにしても気の遠くなるような物量の作業です。

 

檜皮葺のメリット

瓦屋根と比較するととても軽量

檜皮で屋根を葺くとだいたい1平方m当たりの重量は
20kg程度になるそうで、桟瓦葺の60~100kg、
本瓦葺の200kgと比べるとかなり軽く仕上げられます。

雪の降る環境下では軽量化のメリットは計り知れず
降り積もる雪で建物が倒壊するのを免れやすくなります。

 

耐久年数も長い

檜皮葺の屋根はおよそ30~40年ごとに葺き替えられます。

瓦葺が60~100年なのに比べると短いですが、
同じ植物性材料の「こけら葺」が20~30年程度
なのに比べると長いです。

油分を多く含んだものが良質とされ、丹波地方の
檜から採れるものが全国で一番良いとされているそうです。
油分が水分を弾き返してくれれるからです。

 

防除剤の役目もある

檜の樹皮を使用しているので虫が寄り付きにくく
結果、腐食や虫食いが少なくて済みます。
特に油分を多く含んでいるとその効果を受けやすいので
それらをよく吟味する目も必要ですね。

 

定期的な仕事を与える

葺き替えは30~40年周期ですが
通常のメンテナンスも欠かせませんし
一旦葺き替えとなると大勢の職人の手を要し
それだけで一大プロジェクトです。

当時は多くの屋根が板やわら等で葺いていたため
定期的にメンテナンスを必要とし、それが職人達に
仕事を与え、生活を安定させていました。

 

多くの職人さん達が長い時間と
経験と勘を注ぎ込んだその結果…完成。

 

上賀茂神社
↑屋根の葺き替えが済んだ「上賀茂神社」

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このような綺麗な社殿や仏閣が延々と受け継がれていくには
相当の忍耐や技術力、伝統継承のシステムが必要ですね。

 

後継者育成と伝統継承

土木建設業では成り手が不足していて
外国人労働者を継続的に受け入れるかどうかさえ
問題にあがっていますね。

宮大工さん達、職人の世界も例外ではなく
今回紹介した原皮師や檜皮葺師は後継者が
不足しているそうです。

2001年に林野庁は
伝統的木造建物を後世に伝えるために必要な檜皮や木材の供給や、
原皮師の養成のための場所を提供することなどを目的とした
「世界文化遺産貢献の森林もり」を近畿・中国地方などの
国有林に設定しています。

同年文化庁でも文化財建造物の修理に必要な原材料の確保のため
「ふるさと文化財の森構想」を立ち上げ、文化財の資材確保のため
調査研究や文化財修理関連技能者の養成研修をするための施設建設を
進めているそうです。

この動きを受けて京都市は2003年秋に、清水寺や産寧坂の
街並み保存地区に近い東山区清水に「文化財建造物保存技術研修センター」を設置。

原皮師や屋根葺師などの養成研修や講習会を
おこなえるようにしているそうです。

またここでは
屋根葺技術の普及啓発のために一般の人向けの
展示もおこなっているそうです。

神社仏閣と伴に生きる宮大工の世界。
もし興味があるなら一度覗いてみては如何でしょう?
きっとやりがいのある仕事だと思われますよ。

 

まとめ

「植物性屋根葺工法」が伝統と格式の高い
技術であることは理解できました。

しかし、自然との共存が課題で檜の生育管理や
後継者の育成、自社仏閣の今後の維持についても
解決が急がれます。

自然と共存する技術を後世に残して欲しいです。

  • 上賀茂神社は世界文化遺産
  • その屋根葺き工法は「檜皮葺(ひわだぶき)」という
  • 植物性屋根葺工法は格式の高い技術で貴族や自社などにしか用いられなかった
  • 檜皮葺の専門職人が原皮師と檜皮葺師でどちらも後継者不足
  • 檜皮葺師の使用する「竹釘」は高速で打ち込まれる技術の1つ

編集後記

屋根葺きといえば白川郷のような
ススキなどを使った作業がのどかな田舎の風景として
思い浮かびます。冬は豪雪で大変らしいですが
観光で訪れたいです。

 

でわでわ、また今度。

 

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